石田のヲモツタコト

書いてるのは 石田剛 です。

【重要】まずは「石田のヲモツタコト」の中の人と「その他の石田」の分離を読んでください。

町田市民病院への「地方公営企業法の全部適用」が必要な理由を市議会会議録から読む

# 2008/12/27 誤記訂正 翌日→後日
# 2008/12/27 誤記訂正 否決された→否決すべきものと決した
# 2008/12/27 ちょっとなおした 危惧する旨の理由が→危惧する旨が


この理由を市議会の会議録から読み解くことを試みる。

『全部適用』の具体的な得失について

全部適用の得失については、主にこの委員会の「第79号議案」の質疑と討論で議論されたようだ。
平成20年健康福祉常任委員会(9月)−09月17日-01号

◎市民病院事務長 第79号議案 町田市病院事業の設置等に関する条例の一部を改正する条例についてご説明申し上げます。
 本案は、現在、地方公営企業法の一部、財務規定等のみを適用しております町田市病院事業に、本年11月1日より地方公営企業法の全部を適用するため、改正するものでございます。
 主な改正点は2点ございます。1点目は、地方公営企業法の全部を適用する旨を規定するものでございます。2点目は、病院事業の業務を執行させるため、事業管理者を置くものでございます。
 よろしくご審議の上、ご承認賜りますようお願い申し上げます。


全部適用すると何がどうなるかについては、市民病院事務長などの答弁から以下のことがわかる。

  1. 病院事業管理者は市長が発令する。(議会の同意の要否には触れていない)
  2. 運営, 職員の任命, 財務は病院事業管理者が責任を持つ。
  3. 市の財政から繰入金を支出する場合は、病院事業管理者が市長に意見を伝え、市長が決済する。市議会の決議も必要だそうだが、これが事前なのか事後なのかは触れられていない。


「全部適用すべき」との主張やその根拠としては、以下の物が見られた。このことを述べたのは、市民病院事務長だけだったようだ。

  1. 企業管理者を置くことで経営責任を明確化する。
  2. 企業管理者による迅速な意思決定のもと、効率的かつ効果的な事業運営ができる。


この際、企業管理者と市長との分掌について、以下の説明がある。

◎市民病院事務長 管理者の権限というのは、地方公営企業法規定されております。昨日も質疑の際に申し上げましたが、管理者の権限は、まず市長の権限に属するものは予算の調製、議案の提出、決算を監査委員の審査及び議会の認定に付すこと、過料を科すこと、これが市長の権限でございまして、これ以外は管理者の権限となります。
 また、管理者の権限ではありますが、市長の同意を要するものは、主要職員の任免、金融機関の指定、管理者に事故ある場合の上席職員の指定ということが地方公営企業法で定められております。


これらの根拠はたぶん『「地方公営企業法」の第八条と第九条が適用されるから』ということなんだろう。
参考:地方公営企業法

(管理者の地位及び権限)
第八条  管理者は、次に掲げる事項を除くほか、地方公営企業の業務を執行し、当該業務の執行に関し当該地方公共団体を代表する。ただし、法令に特別の定めがある場合は、この限りでない。
一  予算を調製すること。
二  地方公共団体の議会の議決を経るべき事件につきその議案を提出すること。
三  決算を監査委員の審査及び議会の認定に付すること。
四  地方自治法第十四条第三項 並びに第二百二十八条第二項 及び第三項 に規定する過料を科すること。
2  第七条ただし書の規定により管理者を置かない地方公共団体においては、管理者の権限は、当該地方公共団体の長が行う。

(管理者の担任する事務)
第九条  管理者は、前条の規定に基いて、地方公営企業の業務の執行に関し、おおむね左に掲げる事務を担任する。
一  その権限に属する事務を分掌させるため必要な分課を設けること。
二  職員の任免、給与、勤務時間その他の勤務条件、懲戒、研修及びその他の身分取扱に関する事項を掌理すること。
三  予算の原案を作成し、地方公共団体の長に送付すること。
四  予算に関する説明書を作成し、地方公共団体の長に送付すること。
五  決算を調製し、地方公共団体の長に提出すること。
六  議会の議決を経るべき事件について、その議案の作成に関する資料を作成し、地方公共団体の長に送付すること。
七  当該企業の用に供する資産を取得し、管理し、及び処分すること。
八  契約を結ぶこと。
九  料金又は料金以外の使用料、手数料、分担金若しくは加入金を徴収すること。
十  予算内の支出をするため一時の借入をすること。
十一  出納その他の会計事務を行うこと。
十二  証書及び公文書類を保管すること。
十三  労働協約を結ぶこと。
十四  当該企業に係る行政庁の許可、認可、免許その他の処分で政令で定めるものを受けること。
十五  前各号に掲げるものを除く外、法令又は当該地方公共団体の条例若しくは規則によりその権限に属する事項

地方自治法 の適用除外)
第四十条  地方公営企業の業務に関する契約の締結並びに財産の取得、管理及び処分については、地方自治法第九十六条第一項第五号 から第八号 まで及び第二百三十七条第二項 及び第三項 の規定にかかわらず、条例又は議会の議決によることを要しない。
(第二項 省略)


参考:地方自治法

第九十六条  普通地方公共団体の議会は、次に掲げる事件を議決しなければならない。
一  条例を設け又は改廃すること。
二  予算を定めること。
三  決算を認定すること。
四  法律又はこれに基づく政令に規定するものを除くほか、地方税の賦課徴収又は分担金、使用料、加入金若しくは手数料の徴収に関すること。
五  その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める契約を締結すること。
(中略)
八  前二号に定めるものを除くほか、その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める財産の取得又は処分をすること。
(以下略)

(財産の管理及び処分)
第二百三十七条  この法律において「財産」とは、公有財産、物品及び債権並びに基金をいう。
2  第二百三十八条の四第一項の規定の適用がある場合を除き、普通地方公共団体の財産は、条例又は議会の議決による場合でなければ、これを交換し、出資の目的とし、若しくは支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けてはならない。
3  普通地方公共団体の財産は、第二百三十八条の五第二項の規定の適用がある場合で議会の議決によるとき又は同条第三項の規定の適用がある場合でなければ、これを信託してはならない。


「全部適用すべきでない」との主張は、討論で委員の方からあり、市民病院に競争原理が持ち込まれることを危惧する旨が述べられた。


どうやら、『全部適用』の具体的な得失についての議論はこれだけだったようだ。ちょっと寂しい気がする。

その他の質疑の様子

委員のお一人から、直近の経営実態(救急の件数とか、4年連続赤字とか)について質す質問が出たが、これは「全部適用」の得失を明らかにする議論に資するところが少ないと読み取れた。この一連の質疑の中で、わずかに病院事務局の経営に対する考え方を質してはいる。しかし、こういう理念の議論は「全部適用すべきか迷ってる」段階にすべきであって、現在の「全部適用したいから承認してくれ」という段階で議論するのは、タイミングが遅すぎる。
「救急の大事さ」「赤字続き*1」「10対1看護 から 7対1看護 への移行」なども大事な話ではあるが、ここでするべき事じゃない。むやみに議論の対象を広げるのは議論の収束を妨げる。


そのほかにも、「病院の事務方で『全部適用』についてどのような検討をしてきたのか」とかいう話を枕に「『全部適用』の目的は何か」とか「独立行政法人, 指定管理, 民間委託 といった手段について、以前検討した結果をどう反映したか」とかいう、ちょっと「何をいまさら...」と言いたくなるような質疑もある。この委員会では、すでに「『全部適用』に移行する」旨の議案の承認を求められているのであり、その冒頭で『全部適用』の得失について議論があるのだ。その話をするにはタイミングが遅すぎるだろう。
それとも、この議案の承認を求められるまで、健康福祉常任委員会には何の相談もなしに、『全部適用』の話が進んでいたのだろうか? だとしたら、町田市議会の健康福祉常任委員会が、その役目を果たせる状態かどうか確認する必要がある。
同じ委員の方による「管理者はもう決めているか、いるならどんな方か?」という質問は、『全部適用』の可否とは切り離して議論すべきことだが、今議論すべきことではあるだろう。


また他の委員の方からは、ご自身で「抽象的」とお断りしつつ、「そもそも町田市民病院は、何のために、だれのためにあるのか」という質問も出ている。もう、周回遅れどころの話じゃない。この会議は本会議じゃなくて専門委員会だ。本会議なら話の筋道をより多くの方に伝えるために、そういう基本的な話をする必要があるかもしれないが、専門委員会がこれではさすがにどんよりする。
この質問にも、真摯に応じられた 市民病院総院長 と 市民病院参与 のおふたかたのご苦労をお察しする。
さらにこの委員の方は、「『全部適用』しなくてもほかに手段があるのではないか」といった質問をされる。少し追いついてきたが、まだ何周か遅れている。
同じ委員による「なぜ急ぐのか」とか、「病院職員の方の合意は十分か」とかの質問は、周回遅れでない今すべきものだろう。

(脱線)「病床稼働率95%」を目指すべきか

ところで、本題からはやや脱線しているものの、町田市民病院総院長から興味深い発言が出ている。

 それで、基本的にはきのう申し上げたように、これだけの大きな病院になってしまって、人件費がかかる。給与費が50%を超えるということがやむを得ない日本の公的病院においては、黒字に持っていくということは大変至難のわざだと思うんですね。だけれども、それでも病床稼働率95%にして、在院日数を理想的な形に、一番いいところに持っていくように工夫していけば黒字も――赤字をうんと減らすという形に、とんとんでも随分違うと思うんですが、マイナスをそんなにつくらないというところの経営まではいけるだろう

強調は石田による。
うーん。病床稼働率が 95% になるってのは、二次救急病院として好ましいことだろうか? これだと「満床」で「救急受入れ不能」になる確率が高くなりすぎはしないだろうか?
参考:マネジメントの神様による医療経営セミナー - NATROMの日記
参考:病床利用率のコントロール - NATROMの日記

採決

この議案は、この委員会において賛成少数で否決すべきものと決した。しかし、後日の本会議では一部修正されて可決される。この一部修正は委員会の中で提案されたものではない。もし石田がこの委員会の委員だったら、自身の無力を恥じるだろう。


関連:町田市民病院について市議会の会議録読んでみた - 石田のヲモツタコト

*1:石田は、赤字続きであることにはそれなりの事情がある可能性が高いと考えている。このことについては「町田市民病院はこのような状況に陥っていないのだろうか? のコメント欄」などにも少し書いた。