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石田のヲモツタコト

書いてるのは 石田剛 です。

『妊婦だけどインフルエンザ予防接種やめます』につけたコメント

社会

もうずいぶん前から、「トンデモ新聞である」との評価が確立した方が有益であると言わざるを得ない状況*1だった JANJAN は、各記事に「ご意見板」というコメント欄があることが一縷の望みだったのだが、その「ご意見板」が 2010/05/18現在 閲覧できなくなっている。確か、以前読んだ「お知らせ」*2では、リニューアル後に書きこみはできなくなるが、閲覧はできるようになる旨が通知されていて、実際閲覧できるようになってるのを見かけた記憶があるのだが、これは気のせいだったのかもしれない。


そんなわけで、「まずい記事 なんだけど、読者が『ご意見板』を読んでくれれば解毒可能な状態」になっている記事がいくつかあったのだが、今はそれらはただの まずい記事 になってしまっているようだ。
その中でも、ちょっと看過し得ない記事がある。その記事はインフルエンザの予防接種に関する記事で、 2010/05/18現在 Google で『妊婦 インフルエンザ 予防接種』で検索すると 1ページ目 に表示されるようだ。せめて石田にできることとして、その記事に石田がつけたコメントをここに再掲することにした。
妊婦だけどインフルエンザ予防接種やめます−JanJanニュース

[54344] 石田は季節性インフルエンザの予防接種は受けました
名前:石田剛
日時:2009/11/18 15:30


「元国立公衆衛生院感染症対策室長」の方を「感染症対策のプロ」と評価し、そのご意見を重視されるのであれば、その他多数の専門家の方のご意見も、同様に重視されるべきではないでしょうか?


多くの専門家が「小児や妊婦はインフルエンザの予防接種を受けるのが望ましい」と考えているとしたら、「インフルエンザワクチンは打たないで!」と訴えている一人の専門家の意見だけを伝えるのは、ひどく偏った態度だと考えます。こういう場合は、他の信頼できる専門家の方の意見も調べた上で、どちらの意見を信頼すべきか考えることこそが「鵜呑みにしない」態度だと石田は考えます。もし、どちらの専門家の意見を信頼すべきか判断できないのであれば、両方の意見を併記することもできます。


石田は専門家ではありませんが、その石田にでも誤りとわかる主張がいくつか記事中にあります。もし母里啓子さんが、そういう誤った主張を広めようとしているのであれば、そういう方を専門家として信頼するべきではないと、石田は考えます。


誤り1:
> 3.新型インフルエンザの場合、予防接種をしたから
> 重症化を防げるというデータがあるわけではない。
この記述自体はたぶん誤りではありませんが、これを「予防接種すべきでない理由」として述べるのは誤りです。
予防接種が新型インフルエンザの重症化を防ぐかどうかは、疫学研究によってしか明らかにできません。予防接種を始めたばかりの状況で、このデータが無いのは当然(注1)です。それを「予防接種すべきでない理由」として専門家の方が述べるのは、意図的にミスリードを誘う行為だと石田は考えます。


新型でないインフルエンザの予防接種については、発症や重症化の確率を下げる効果があることが、疫学研究で明らかにされています。このことから、新型インフルエンザでも同様の効果が期待できると推測することは、十分に合理的だと考えます。


注1:
臨床試験のデータならあるかもしれませんが、重症化する確率の大きさを考えると、「重症化を防ぐ」と言えるほどのデータを得るのは、たぶん難しいでしょう。ふつう、臨床試験は重症化リスクが低い方の協力で行うであろうことにも注意が必要です。
重症化する確率が低いとしても、非常に多くの方が罹患すれば当然にそのうちの何人かは重症化します。同時に多くの方が重症化すれば、重症者のための医療リソースを使い尽くし、助かるはずの方が亡くなるような事態も起こるかもしれません。念のため。


誤り2:
> その1日のために、子どもが異常行動を起こさないかと
> 24時間見張っていなければいけない。タミフルを飲んで
> いなければ、氷枕で冷やして寝かせておけるのにですよ。
もしこれが「タミフルを飲むと異常行動を起こす確率が大きく高まる」という主張であれば、明らかに誤りです。この発言からは、明示的ではないもののそう主張していると読み取れます。
インフルエンザに罹った子供は、タミフルを飲もうが飲むまいが、極めて小さい確率で異常行動を起こすことが知られています。タミフルを飲むことが、異常行動を起こす確率をわずかに高める可能性は否定されていませんが、高めるとしても極めてわずかであることは十分に明らかになっています。同時に、タミフルを飲むことが異常行動を起こす確率を高めない可能性も、まったく否定されていません。


異常行動が心配だったら、タミフルを飲もうが飲むまいが 24時間 見張ってください。
けど、石田なら普通に寝かせて、異常行動よりもむしろ脳症の症状が無いかに注意してときどき観察します。


「マスコミのいうことを鵜呑みにせず」というご意見には、石田もまったく同感です。同時に、一人の方の意見に触れて、そのご意見に対する反論や異論に触れることなく納得してしまうことこそ「鵜呑みにする」ことだと理解しています。


もし、予防接種やタミフルに重症化を防ぐ効果があるなら、これらを使って自分が重症化しないようにすれば、他の重症者のための医療リソースを空けておくことができます。もし、予防接種やタミフルで他人にインフルエンザをうつす確率を減らせるなら、インフルエンザに罹る方の総数を減らすことができます。
予防接種やタミフルは、自分の身を守る効果も期待できますが、同時に他人を守る効果も期待できる、社会的な防御の上でも重要な手段です。幸い、現状は新型インフルエンザの予防接種は、ワクチンが足りないくらい多くの方が接種してくれていますので、社会的な防御の効果は期待できる状態です。この効果は予防接種をしたくてもできない方や、自身の意思で予防接種を避ける方にも及びます。
予防接種やタミフルを避ける方が十分に少数である現状は、石田にとってとてもありがたいことです。今後も十分に少数であり続けることを願っています。


石田自身は、今流行っているインフルエンザでは、予防接種もタミフルも無しで、非常に高い確率で無事に回復できるでしょう。しかし、石田の家族には乳児や幼児があり、彼らは石田自身ほど高確率で回復することは望めません。石田は予防接種やタミフルが利用できるなら、主に彼らにうつす確率を下げるために、ありがたく使わせていただきます。石田が独り身だったら、たぶん現状では予防接種は受けません。
子どもがインフルエンザに罹ったと医師に診断されたときには、おそらくタミフルなどの抗インフルエンザウイルス薬の処方をお願いするでしょう。石田は、タミフルがふんだんに供給されている現状を、とてもありがたいことだと考えています。


あの JANJAN の記事を Google で見つけてしまう方がここにたどり着く可能性は低いし、感染症の専門家でも医師でもない石田のコメントにどの程度の意味があるかは心もとないのだが、まあせめてできる限りのことということで。


2014/02/01補足:
『極めて小さい確率で異常行動を起こす』は間違ってたな。異常行動については「意味不明なことを言う」などの、危害の小さい場合も含めて「異常行動」と数えたんだから、その確率は小さくはない。正しくは、『異常行動はタミフル群も対照群も多く、その差はわずかだった』だな。